『あまちゃん』の放映によって、海女によるウニ漁は有名になったと思います。
ところが場所が変わると漁の方法も変わり、気仙沼でのウニ漁・アワビ漁は、
『だんべっこ(略;小舟)』の上から箱メガネで海底を見て、カギで引っ掛けて捕る漁法です。
そこで、気仙沼のウニ漁について、簡単にご紹介したいと思います。
気仙沼でも、浜によっては多少、違うところも出てきますがご了承ください。
前日に『あした、かぜの開口だから!(略:明日、ウニの解禁日です)』と通達がきます。
そうすると、ソワソワと道具を準備・点検し、出漁に備えます。
昔は夜明けから規定時間までの解禁時間でしたが、現在は開始時間も規定され、ウニ漁であれば朝5時〜7時、アワビ漁であれば朝7時〜9時といったように時間指定にて通達がきます。
ウニ・アワビ漁は誰もが捕れる訳ではありません。
所属の漁協の漁業権を保有していないと捕ることは出来ません。
また、船には1家族1艘と決められており、家族以外の人を乗船させることも許されません。
従って、家族の中で複数捕れる人がいれば、それだけ収穫量が増えるということになります。
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こんな感じで5時前に漁場にだんべっこで向かいます。
昔は木造船が主流でしたが、現在(特に震災以降)はFRP船がほとんどです。
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開始時間になるとサイレンが鳴り響き、一斉に箱メガネで海底を見ながら竿でウニを捕りはじめます。
時間が決められているので収穫量は漁師の経験と腕次第で決まっていきます。
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開口はシーズン(ウニは初夏)中に4、5回ほど開きます。
最初の頃は浅場にも大きなウニはいますが、回が増すごとに浅場の大きなウニは捕りつくされ、深場へと捕る場所が変わっていきますが、そうなると、漁師の腕の見せ所になっていきます。
ウニ漁は殻長6pを超える大きさでなければ捕ってはいけません。
深場になるほど、潮流の影響を受け、竿の先端のウニを捕る『カギ』が目的のウニの場所に行きづらくなります。
腕のいい漁師は潮の流れをよんで竿をコントロール、海底では竿が湾曲になりながらも腕のいい漁師の『カギ』は一発で目的のウニに到達するのです。
うちの親父も腕がいい方の漁師でした。
しかし、教えることはなく、『見て覚えろ、盗め』の親父でした。
さて、ウニ漁の道具をご紹介します。
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ウニを捕る『カギ』は手前の2本カギを使います。カギとカギの間にウニの殻を乗せて1個づつ捕っていく方法です。
ちなみに上の1本カギはアワビを捕る際のカギで、基本的にウニ漁とアワビ漁の違いは、このカギの形状になります。
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カギを付ける竿は捕る深さに合わせ何本も準備します。
深場を捕るベテラン漁師は約10m程の竿も準備します。
竿は竹で手作りが主流でしたが、最近は釣竿のようにグラスファーバー製を購入するケースもあります。
私は親父に竿の作り方を教わらなかったので、仕方なく高価ですが、グラスファーバー製を購入し2本だけ準備しました。
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海底をみる『箱メガネ』です。この辺ではなぜかガラスと呼んでいます。
右側が昔ながらの箱メガネ、左側の黒いのが最新鋭?の箱メガネです。
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この辺では、箱メガネを噛んで歯・あごの力と首の力を使い、箱メガネを自由に位置を変えて獲物を探します。
しかし、私には歯・あごの力が弱く、波の力に負けて箱メガネが思うようにコントロールできず、仕舞いには歯がガクガクになりそうで・・・。
仕方なく、また、最新鋭?の箱メガネを買うことになったのです。
その箱メガネは歯で噛む以外に頭をも固定するので、歯の負担を軽減しコントロールできます。
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この辺では『スラスター』って呼んでいますが、船のかじ取り機です。
昔のウニ・アワビの開口は夫婦船が多く、夫が捕り役、妻が櫂(かい)を使い手漕ぎでの舵取り役が普通でした。
そして、その子供が捕れるようになると3人で出漁、私の中学時代は正にその体制でした。
しかし、ある時、お袋の堪忍袋が切れてしまい、その体制が崩れてしまったのです!
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この漁は一攫千金で真剣勝負です。
夫の腕はもちろん、舵取り役が、いかに潮の流れや波などに負けず、獲物のいる場所に舵取りできるかも大きく漁獲量に影響します。
「よせろ!」「おもで!」「おせ!」「ひけ!」と親父が獲物がいる方法の指令を出すのですが、なにせ舵取り役は海底が見える訳でもなく、波、潮、風の自然相手ですから、なかなか、親父が思っているようにはコントロールできず、お互い常にケンカ腰です。
今、考えればお袋は生活がかかっているので、相当のストレスと我慢を強いられたと思います。
ところが、ある日、『スラスター』の存在を知ったお袋が、堪忍袋が切れてしまい、親父に『スラスター』を与え、それ以来、1度もお袋は開口に行かなくなりました・・・。
当時、ちょうど私も遠くの学校に行き、そのまま社会人になり、開口に出る機会も減ると、親父は渋々1人で漁に出るのでした。
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2014年、初開口の時の収穫です。
震災前ですと、殻のまま加工業者が買い取ってくれていたのですが、その加工業者も被災し買い取りできないため、現在は自家消費になっています。
剥く作業がこれまた大変で、本家のおばちゃんなどに手伝ってもらって剥き作業を行いました。
そして、近くの親戚などにお裾分けです。
『殻のまま売ってちょうだい!』っていう方がいれば助かるんですがね〜。
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生うには長期保存ができないので、2回目の開口の収穫したウニは『塩ウニ』と『ウニ味噌』の加工にトライです。
塩ウニでは塩加減が分からず、過去の記憶とおばちゃんのアドバイスをもらってトライしました。
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2日後、出来上がり、味見したらちょうど良い塩加減に一安心。
パックに小分けし、半分はお裾分け、残り半分は、仙台に家族が揃う時に提供するために冷凍庫で保管中です。
ウニ漁は震災以降、2013年は天候に恵まれず、2014年が本格的な収穫になります。
その影響とウニの繁殖力もあり、ウニが増えすぎているとの懸念が新聞などで問いただされています。
確かに、震災前に比べ、大小ウニの量が多いな〜と感じました。
ウニが多すぎると、エサとなる海藻を食い漁られ、『磯焼け』現象を引き起こし、生態系への影響が懸念されます。
特にエサが同じであるアワビへの影響が心配されます。
更には、ウニ自体がエサ不足によって、身の色や悪くなったり、身が細ってしまったりと、商品価値の低下も懸念、結果的にウニの収穫への期待がなくなり、捕らない、更にまたウニが増える、といった悪循環にならないようにしなければなりません。
仙台の姪が言ってました。
お寿司屋さんのウニは苦手だけど、気仙沼のウニは食べられる!美味しい!って。
取り立ての生うには保存のための添加物等が一切入っていないので、一般的に市場に出回っているウニの味とは全然違います。
ウニの適正生息量を維持し生態系に影響させないためにも、この美味しいウニの新たな販路手段を考える必要がありそうです。
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